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ムシバナシの雑記帳

日々雑感あれこれです 日課は踏台昇降と読書少々、朝の焼海苔

『その先の道に消える』中村文則  

2月に著者がJAM THE WORLDにゲスト出演されていて、この本を知った。

考えたくない人が増えているように思う
日本とは、日本人とは何か
人間を深く書く時に“性”は自然に出てくる

というような言葉が番組内であった。保守化、全体主義化への危機感を持つという著者の作品を久し振りに手に取る。

教団X』もそうだったが、今回は緊縛モノということで更に濃厚な性描写だった。んむー。
官能、刑事、ミステリー?
登場人物達の闇が深く哀しい。この方の本はそういう話が多いような気がする。
日本人の根源にまで言及するが、私の中で緊縛の世界との統合が難しく理解しきれなかったように思う。

意外にも、著者あとがきの最後の言葉にぐっときて、再読したくなった。

著者 : 中村文則
朝日新聞出版
発売日 : 2018-10-05

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『平場の月』朝倉かすみ  

若くもなく、しかし老後というには少し早い50歳、地元で偶然再会した男女のそれまでとそれから。
育った場所を地元というならば、地元を離れた自分にはちょっと遠い設定だったのでどうも入り込めなかった感はあるが、その年齢ならではの哀切はわかるような気もした。

光文社
発売日 : 2018-12-13

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『滅びの園』恒川光太郎  

『夜市』『無貌の神』『雷の季節の終わりに』等とは随分違う雰囲気なので、その辺りの世界観を期待すると「あれ?」となると思うのでその心づもりで。

SF、ファンタジー、ホラー?なるほどこういう発想もあるのだなと、著者の守備範囲の広さというか自由さがすごい。
あらすじを知らずに読み始めるも方向性が見えず、数10ページ進んでから「ああ、そっちか!」と。
現実離れした設定ながら、もしも現世界に同じことが起こったら人々は未知の悲劇にこのように立ち向かうのかもしれないと思わせる。妙な現実味。
例えば戦時中の特攻隊を美化して語るような違和感と薄気味悪さ、恐ろしさ。

気分があちこちに向いたままの、落ち着かない読後感だ。

KADOKAWA
発売日 : 2018-05-31

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『Black Box』伊藤詩織  

詩織さん。
あなたが力をふり絞り書き上げたこの一冊は「被害者が泣き寝入りせざるを得ない法律の問題点や、捜査、そして社会のあり方」(218頁)を私達が考えるきっかけを与える力を持っていると思う。

一気に読了し、なかなか寝付けず翌朝も頭の中ををこの本に支配されていた。
過剰な表現を削ぎ落とした文章で綴られる事実と感情、そして提言。真実は、重く苦しく、あまりにも痛切なものだった。

信頼していた仕事上の大先輩(山口敬之氏・TBSの元ワシントン支局長)からの性的暴行
病院や警察とのやりとり
逮捕直前の上からの圧力によるストップ
ネット上のバッシング
冷たいマスコミ

警察などとの会話に矛盾を見つけ問いただす。事件当日に乗ったタクシー運転手に話を聞く。
幾度も魂を殺され、髪が抜けるほどのストレスにさらされながら真実を求め抜く。

山口氏を糾弾するためでもなくセンセーショナルな体験を世に知らしめるためでもなく。
「もしも沈黙したら、それは今後の私たちの人生に、これから生まれてくる子どもたちの人生に、鏡のように反映されるだろう。
」(246頁)
この言葉に、全てが集約されていると感じた。

性暴力だけでなく、何らかの問題で理不尽な思いをしている人。声を上げられず悩んでいる人。
男性も女性も。きっと多くの人の心の支えになってくれると思う。

著者 : 伊藤詩織
文藝春秋
発売日 : 2017-10-18

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『墜落の村 御巣鷹山日航機墜落事故をめぐる人びと』飯塚訓  

墜落遺体』『墜落現場』そしてこの『墜落の村』と3部作だったようだ。
この3作目が読み始めて違和感が。どうも前2作と違い“ノンフィクション・ノベル”という体裁らしく、つまり事実+創作だそうだ。
それはそれで小説として読みやすいのだが、題名から期待するものと違うかと思うのでご注意を。前2作からの引用もあるので、全体的にはわかりやすい。

主には事故現場となった村の墓守りカッちゃん(乱暴で村の厄介者だった)と、元ゼロ戦乘りの村長・黒沢の物語。
自衛隊と警察のそれぞれの動きを見て指揮統率が出来ていないことに気づいた村長は自分達の役割をすばやく悟り、適切に動く、という場面は印象的だ。結果的には村長の統率力・戦争経験で培われた観察・判断力が現場の混乱をかなり軽減させたようだ。カッちゃんは若かりし頃の凄まじい荒くれ者エピソードが満載で、どこまでホントでどこから創作なのかが気になるところ。

悲劇的な航空事故の舞台となり、否応なしに巻き込まれた村の人々。自分の力の及ばないところでの事象にこんなにも左右される人生もあるのだ、と思った。

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